2008/08/24

東洋経済新報社『地頭力(じあたまりょく)』は何故一瞬で死語と化したのか

 ビジネス系自己啓発ネタに熱心な人の間で火が着き一瞬で消え去った地頭力
 抑も何故ブームの担ぎ上げに失敗したのか。

 先ずボラティリティ、サラリーマン人口の減少が大きい。
 昔であれば当時現役サラリーマンだった人口の多いしかも活字馬鹿の団塊世代が、其れこそピンからキリ迄読んでいた。
 そして挙ってビジネス用語を口にし広く波及した。
 しかし今では正社員は所謂勝ち組と呼ばれる程の希少な存在。
 確かにネット上のインテリ層が書くブログの間だけでは、著書で取り上げられるフェルミ推定と共に一瞬だけ盛り上がった。
 しかし其れは日記に割かれる今日の出来事の1ページに過ぎなかった。
 つまり経済誌がマーケティングをミスった訳だ。

 更にネーミングの悪さ。
 火付け役の実行者となった著者こと細谷功氏曰く、著者の居るコンサルティング業界では以前から使われていた言葉だそうだが、一体何処の分野のコンサルティングだろう。
 確かモノ作りの衰退が叫ばれ始めた頃に、素材の土台となる『地金(じがね)』になぞって付けられたと製造業で聞いた気はするが怪しい。
 まるで「実際に私の知り合いの男性、 女性が使っているのをあちこちで聞きました。」と言い張り、『アベする』という言葉を流行語に仕立て上げようとした朝日新聞コラムニストの石原壮一郎なみの胡散臭さw
 抑もコンサルタント自体が胡散臭い存在ではあるが、要は「学は無いが自分の頭の良さや能力の高さを解り易くアピールしたい」という学歴コンプレックスや、逆に高学歴者故の先入観から其の能力をアイデンティティとしてちゃんと正当に評価してもらえないといった中で苦し紛れに出て来たシンボリックな言葉が「じあたま」という言葉だったのかもしれない。
 こういう学歴の価値観に伴うコンプレックスは、団塊世代からバブル世代、団塊ジュニアの前半に掛けてあるわけだが、コンサルタントという独立心の高さから察するに著者はバブル世代といった所だろうか?
 まあ何れにせよ使用歴の実態が本当か嘘かは別にしても、本来なら既知の呼び名に当て字でネーミングするのがセオリーだ。
 つまり造語した単語に対し、他で名の通った読みを付けたり似せて当て読みさせ誤記を装って注意を引き注目させる。
 所が「地頭(じとう)」という既知の単語に対し、読みだけを換えた造語では、注意を引くどころか普通に「地頭力(じとうりょく)」と読まれスルーされてしまう。
 要は「元からある言葉を態々読み辛い読みに替えさせ世間に広く定着させる為に、一体どれだけのエネルギを要するか」という話だ。
 特に活字馬鹿の団塊世代は、誤読を其の侭貫き通して定着させるパワーを持っている。
 国会中継が始まったばかりの頃、政治家達が堂々と「早急」を「そうきゅう」と答弁する姿が頻繁に流れ、当時の子供達(団塊ジュニア)や国語教師等から散々突っ込みを入れられたものだが、政治家のおっさん達はゴリ押しで使い続け、いつの間にかNHKのガイドラインも変更され普通に使われる様になってしまったなんて事もあった。

 そして極め付けは「何でもかんでも自分一人で抱え込んでやろうとせず、人に仕事を任せよ」というビジネス書には必ず書いてある、「時は金なり」に基づいた雇用創出と組織形成法から逸脱し、フェルミ推定の推奨に絡め能力開発で引っ張ろうとした事だ。
 抑も地頭力なんていう能力は一朝一夕で開発出来るものではない。
 ましてや40-50を超えたオッサンが仕事の片手間にトレーニングで身に付く事でもない。
 正に『脳トレ』ブームの二の舞いだ。
 即ちビジネス手法の王道からすれば、「自分に地頭力が無ければ有る者を使えば善い、組めば善い」という事だ。

 こうしたマーケティング、ネーミング、ワークシェアリングといったビジネスのセオリから逸脱する初歩的ミスを、三大ビジネス系出版社の一角がやらかしたのだから痛い。しかも小学館の二番煎じで。
 自社の出版した本すら真っ当に売れない会社がビジネスの本を書いたって、説得力の欠片も無いのだ。


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